敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
知らないことは「知りません」。疑いには「事実無根です」。被疑者に対しては「怒りより悲しみで言葉になりません」――とそんな具合で、当たり障りなく答える。

ようやく落ち着いたかと思いきや、最後に挙手をしたのは、いかつい喋り方をする男性だった。

「写真の女が本人じゃないと証明できたとして、石楠花みどりが品行方正な証拠にはならないんじゃないのォ? 別の日に別のホストクラブに通っていたかもしれないし。ホストじゃなくてギャンブルかもしれない。がっぽがっぽ稼いだ印税はどう使ってるんですかあ?」

こちらの怒りを煽るような、いやらしい言い方だった。

ちなみに振り込まれた印税はほとんど銀行に眠ったままで、生活費や実家への仕送りにある程度はあてているが、ほかにあえて使い道を挙げるなら、誓野さんが時折おいしい牛肉に変換してすき焼きを作ってくれるくらいか。

そのまま答えようとすると、すかさず誓野さんがマイクを取った。

「品行方正である証拠と言えるかは捉え方によりますが、新作発表に絡め石楠花みどり先生の執筆風景をご紹介いたします」

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