敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
彼の顔の両側に手をついて起き上がろうとすると、押しとどめるように背中に手を回された。

「俺の方がこんなに大好きなのに。少しは伝わっているのかな?」

甘い囁きに力を奪われ、彼の胸もとに吸い込まれていく。

耳が彼の胸に触れて、どくどくと脈打つ鼓動の音が聞こえた。

「それから、キスはさせないんじゃなくて、したいけど我慢してるだけ」

私が会見場でキスうんぬんと言ってしまったからだろうか。そんな訂正をしながら蕩けた目で私を見つめる。

「好きだよ、翠さん。世界で一番かわいくて、輝いていて、魅力的だ」

幸せすぎて耳を疑った。いざ言葉にされると夢のようで現実が信じがたい。

愛情を素直に受け取って、かわいく「ありがとう」と言うのが普通の女の子なのかもしれないけれど。

「ど、どうしてです……?」

色気のない台詞が飛び出してしまったのは、恋愛に疎いせいか、伏線のないご都合な展開が許せない作家の性分か。

「翠さんは素敵な人だよ」

「そうでしょうか……?」

「うん。八年間かけて確信した。あなたが好きだ」

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