敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「八年……? 私、以前、誓野さんにお会いしてました?」

「俺が一方的に意識していただけ。あなたとすれ違って、俺の人生は変わったんだ」

彼は顔を少しだけ上げると、同時に顎を引いて、私の額に口づけを落とした。

抱擁とキスと甘い言葉で体温がぐんぐん上昇していく。たまらず彼の胸に顔を埋めて小さくなった。

「翠さんはずっと俺の憧れで、特別な人なんだよ」

「でも私、書くことしかできないのに。ほかはなにもなくて……」

「誰にも負けない誇れるものがある、まずそれがすごいことだ」

書くこと以外に脳のない私を褒めてくれる、そんな誓野さんの方がよっぽど懐が広くてすごい人だと思う。

私が体を起こすと、彼も追いかけるように上半身を起き上がらせた。私の頬に触れながら、甘く鋭い双眸で覗き込んでくる。

「本当に……こんな私でもいいんですか?」

「もちろん。俺は一生懸命で真っ直ぐな翠さんが好きだ」

「小説しか頭にない、つまらない女ですよ?」

「つまらなくないよ。翠さんの頭の中には、知識と夢がたくさん詰まってる」

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