敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
最近の吉川さんは週に一度のペースで私と勇さんの家にやってくる。

愛の巣にお邪魔しちゃ申し訳ないと思っているようで、最低限の打ち合わせだけしに来るのだ。

「実は、次回作の打診が来ていて」

「さすがは売れっ子作家」

「今度も映画化を検討しているらしいんですが、内容が、その……現代恋愛ものらしくって」

へえ、と彼が目を見開く。

『大正浪漫恋謳・花薫る風の便りに』が好評だった上に、私という話題性もある。ぜひ、とスポンサーにお願いされているのだが……。

「チャレンジにはなりそうですが、私が書く意味あるのかなとも思っていて、二の足を踏んでいるんです」

得意ジャンルは歴史ミステリーだと言っているのに。私の価値ってなにかしらとわからなくなる。幻滅するファンもいそうだ。

「いいんじゃないか? 石楠花みどりに書けないものはないだろう?」

「書こうと思えば、書けるとは思うんですけど……」

「おお、自信がついてきたね。前回はあんなに苦戦したのに」

「だって今は……勇さんもいるし」

小さい声でぼそっと囁いて、テーブルの上にある彼の手を握ると、途端に彼は艶っぽい目をして顔を近づけてきた。


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