敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
ドアフォンのモニターを確認して仰天する。そこには、今日は来ないはずの誓野さんの姿があった。

「え!? 今日はお休みのはずじゃ……!」

来ない想定だったから私は寝間着のままだし、ノーメイクだし、眼鏡だし。とても玄関を開けられるような状態ではない。

《じゃあ、切りますね。誓野さんによろしくお伝えください》

「ちょ、吉川さぁ~ん……!」

無常にも通話が切れる。同時に急かすように響くチャイムの音。

おろおろしていると、携帯端末の方に誓野さんから電話が来た。無視するわけにもいかず、仕方なく「もしもし」と通話に出る。

《おはようございます、翠さん。アポもなく申し訳ありません。中に入れてもらっても?》

昨日『俺の恋人になってください』なんて言い出した彼は、名前の呼び方以外はいつも通りの業務的な対応。

いったいなにを考えてあんな提案をしてきたのか、謎のままである。

「今日はいらっしゃらないはずでは……?」

《お渡ししたいものがあって。とりあえずロックを解錠していただけると助かるんですが》

断る理由が見つからない。仕事で必要なものを届けに来たのかもしれないし……。
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