敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「マンションは楽ですよ。共用部分は全部掃除してもらえるし、ゴミ出しも二十四時間いつでもオーケーですから。トラブルがあってもコンシェルジュに相談すればぜーんぶなんとかしてもらえます」

「それはいいかも……」

その翌年、引っ越してきたのがこのマンションだ。

部屋がたくさんあっても私には使いきれないだろうと見越した吉川さんは、三十畳の大リビングにダイニングテーブルやソファ、執務デスクなど生活に必要なものを押し込んでくれた。

できればベッドも置いてしまいたかったけれど、吉川さんに「それだけはやめましょう」と言われて断念。結果、寝室は物置となり、ソファが寝床になった。

ある日、掃除機片手に寝室に入った吉川さんが、ぽつりと呟いた。

「寝室で眠っている気配がありませんね……」

「このソファ、寝心地最高です」

「そんな用途で置いたわけでは……」

どこか落胆した様子で、吉川さんがおずおずと尋ねてくる。

「……みどり先生は、恋人とか、彼氏とか、そういうのは興味ないんですか?」

思いもよらないことを尋ねられ、ぱちりと大きく目を瞬く。

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