敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
ああ、もしかして、私が恋人とイチャコラできるようにリビングと寝室を分けたの?

「恋人って……必要ですか?」

本がパートナーですけど?と視線で指し示すと、すべてを察した彼女は「うん、失礼いたしました」と粛々と掃除を続けた。

交際への興味は本当になかった。これまで本ばかり読んでいて、色恋と接点がなかったのも大きい。

私の周りにいる男性って言ったら……たまに会う出版社の営業さんと、編集長、映画会社の人くらい?

とても恋愛対象とはいえず、交際のイメージがさっぱりわかない。

だいたい仕事で忙しくてそんな時間もないしね。執筆優先、結局はそこに落ち着いてしまうのだ。



そうして私と吉川さんのふたりで三作品、四作品と仕上げていくうちに、作品よりもメディアミックスが先行するようになった。

十作品目となる今作は、スポンサーから歴史ものと絡めた恋愛作品をとオーダーされたものの――。

「純愛……ですか」

頭を抱える。歴史作品は当たり外れが大きいし堅苦しくなりがちだから、幅広い年齢に受けのいい純愛を絡めて――っていうのは、手堅い選択だとは思うけれど。

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