敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「私としても石楠花みどりのよさを全然わかっていない失礼なオーダーだったと思います。スポンサーにかけあって、テーマを変えてもらいましょうか。もしくはほかの作家さんに打診して――」

「いえ。私がやります」

専門ではないけれど、私が書くはずの物語をほかの作家さんに取られるのは悔しい。それに――。

「書けないなんて、石楠花みどりの名折れですし」

若輩ではあるけれど、ベストセラー作家としてのプライドはある。周りを幻滅させたくない。

「さすがはみどり先生」

吉川さんが眩しそうに私を見つめる。ふふん、えらいでしょう?と親に褒められた子どものような得意げな顔になった。しかし――。

「ところで、ひとつご報告が」

そう切り出して、なぜかローテーブルの前に正座する吉川さん。

「実は私、来月からみどり先生の担当を離れて内勤に異動します。年明けには出産を予定しておりまして」

カチン、と凍りつく私。

「妊娠……していたんですか?」

「そうなんです。うふふ」

「えっと……おめでとうございます……」

結婚していることは知っていたけれど、妊活していたとは知らなかった。

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