敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
秋色に染まる景色があまりにも美しく、木々の揺れる音と鳥のさえずりだけが響くこの静けさ。集中して書くには絶好すぎる。

「買い出しや家事はすべて俺がやります。翠さんは原稿に集中してください」

そう言われたところで、はたと気づく。誓野さんが東京からここまで通うとなると、往復で四時間はかかる。とてもこれまで通りとはいかないだろう。

私の世話以外にも、編集業務はたくさんあるだろうから、通えてせいぜい週に二、三回ではないだろうか。

……いや、休日にも食事を届けにくるような人だから、無理を押してでも毎日通うつもりかもしれない。

「誓野さんの負担が大きすぎます。家事は自分でなんとかしますので、買い出しだけお願いできると――」

言いかけたところで、「問題ありません」と言葉の先を制される。

「月に二、三度、出版社に顔を出すことにはなるかと思いますが、基本的には常駐しますので」

ん? と眉をひそめた。常駐……?

「……誓野さん。もしかして、一緒に住むつもりです?」

「もちろん。住み込みでお世話をさせていただきますよ」

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