敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
待って。ひとつ屋根の下でいい歳の独身男女が同居? それはまずいでしょう。執筆どころの騒ぎじゃない。

「で、ですが、お仕事の範疇を越えてません? 迷惑でしょうしっ」

「人里離れた場所で女性をひとり暮らしさせるわけにはいきません。人も動物もいろいろと危険ですから」

いやいや、一番危ないのは野生動物でも野党でもなく、あなたでは……!?

誓野さんがさっそく車のトランクを開けて荷物を取り出す。クーラーボックスに大きなボストンバッグ三つ。ああ、もう完全に同居準備してるじゃない……。

「いくら担当とはいえ、そこまで甘えるわけには」

「担当ではなく『恋人』ですから、遠慮なく甘えてください」

ぎょっと目を瞬かせる。ここでその話題が出てくるの?

「お触りなしの、概念的恋人の話ですか? あれは一体なんだったんです?」

「過去形にしないでください。これから始まるんです」

彼は荷物を持ったまま、端整な顔を近づけてきて、至近距離で私をまじまじと見つめた。

「いいですか。あなたは華族の令嬢。そして私はあなたに仕える奉公人です」

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