敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「……全然ぶちゃいくなんかじゃありませんし。俺はそのままの翠さんが素敵だと思うけど」

不満げにぽつりと漏らした彼に、驚いて目を瞬く。彼が不満そうなリアクションをするのは初めてだったから。

端正な顔をわずかにひそめ、若干強張った表情をしている。

「でしたら、座机に向かううしろ姿だけでも毎日撮らせてください。正面の窓から四季が伝わって趣のある写真になりますから」

「四季というか秋と冬の二季ですけどね。しかも枯れる一方で芽吹きがないっていう……」

「いいじゃありませんか、物悲しさも情緒です。色づく葉が少しずつ枯れ落ちていく様子は風情があります。そこに翠さんの着物姿があればいい絵になる。写真集が出せるかも」

ぎょっとして目を見開く。写真集なんて冗談じゃない。私はタレントになるつもりはないのだ。

「写真集はお願いですからやめてくださいね……?」

そう念を押す私を、彼は背後から撮影する。

「着物のバリエーションが欲しいですね。もっと持ってきましょうか」

「持ってくるって……この着物、どこで調達しているんです?」

「実家の屋敷にあったものです。若い頃に祖母が着ていたとか」

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