敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
男性が苦手だって話も、たぶん吉川さんから聞いているはず。

だからあえて恋人の真似事をしてくれているのだろう。恋愛を知らない私が、恋する女性の心を描けるように。

「まあ、読者を幻滅させたくはないですし、ここまで来たら徹底的に演じてやるつもりですけどね」

今さらこの舞台を降りる気はない。知的で優雅で、モテるのに男を寄せつけないソロ充美女・石楠花みどりをみんなが期待しているのだ。

「でもこれ以上、嘘を嘘で塗り固めたくないなあ」

みんなが想像している分には嘘にならないけれど、それを私が肯定してしまったら嘘になる。ぼんやりとした存在のままでいたい。

誓野さんはカメラを下げると、真っ直ぐにこちらを見て言い放った。

「俺が見ているのは――支えたいのは、翠さんです」

あまりにも真剣な顔で言うものだから、困惑して笑顔が歪む。

「ありがとう、ございます」

誓野さんはどこまで本当の私を理解しているのだろう。どこまで素直になっても幻滅しないでいてくれるだろう。

唯一嘘がないのは作品だけ――私は書き続けるしかないのだ。

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