敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
いつの間にか世間のイメージは、モテるけれどあえて男を作らない優雅なソロ充ウーマンになっていた。幻滅させないように装うのが大変である。

そんなこんなで、今も小綺麗に見える服を着て、それなりのメイクをしているが、真の姿は一日中寝間着を着ていたいすっぴん眼鏡のずぼら女子。

身長は一五六センチ、どちらかといえば痩せ型で童顔気味、スタイルも色気とは程遠い。

……でもたぶん、誓野さんには『ハイセンスな石楠花みどり』に見えているんだろうなあ。

彼にいつ本性を打ち明けるか、悩ましい限りである。

私に紙エプロンを装着した誓野さんは、そのまま背後に立ち腰を屈めた。

「失礼、髪に触れてもかまいませんか? そのままでは食べにくいと思いますので」

イエスと答える間もなく、彼が私の首筋に指先を滑らせたので、思わずひぃっと悲鳴を上げそうになる。

下ろしていた髪を束ね、うしろでひと纏めにしてくれる。

しばらくすると背後から、くすりと微笑むような吐息が漏れ聞こえてきた。

「石楠花先生の髪はふわふわしていて、触り心地がいいですね。ずっと触れていたくなる」

耳もとで囁きかけられ、鼓動がドキリと跳ね上がる。

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