敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「て、天然パーマなんです、お見苦しくてごめんなさいっ」

茶色い髪もウエーブも全部生まれつき。髪が長いのもこだわりがあるわけじゃなくて、美容院に行くのが面倒なだけだ。

「天然、ですか。とても綺麗ですよ。なんだか羨ましいな」

引き続き耳元で抑揚のないソリッドボイスを響かせながら髪を梳く彼。ぞくっとしちゃうのでやめてほしい……。

「誓野さんの方が、ずっと綺麗だと思いますよ」

髪も、顔も、スタイルも、こんなに整った人を見たことがない。

誓野さんは「ご謙遜を」と纏まった髪を首の後ろで緩く結んでくれる。

結わえるとき、シャランと聞きなれない音がしたのだけれど……もしかしてこの状況を見越してヘアアクセまで用意してた?

「本当にすみません。なにからなにまで」

「お気になさらず。俺は石楠花先生に心地よく仕事をしてもらうためにここにいるので」

正面の席に回り込んだ彼が、涼しい目もとにたっぷりと情熱を宿らせて私を見つめる。

「先生の力になれることが誇りですから。俺でよければなんでもしますので、自由に使ってください」

なんでもしますって。真面目な顔をしてとんでもないことを言う男だ。

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