敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
誓野さんの背中に手を回す。自分より二十センチ以上背が高い男性に抱きついたらどうなるか、そんな検証中である。

背中に触れ、顔を彼の胸に押し付けてみる。

ああ、大きい。でも以外とスリム? もっとクマみたいにごついのを想像してた。

顔は胃のあたりで、くっつけると心音が聞こえてくる。……ちょっと鼓動が速いな。誓野さん、疲れているのかな?

「身長は一八二センチでしたっけ? だとすると実際の〝彼〟は五センチ以上低いのかな」

その時代の男性、加えて奉公人という立場柄、栄養状態はよくなかったと仮定する。身長はたいして伸びないだろう。夢をのせても一七三センチくらいが限界かな。

「照れもせず抱きつくなんて、なんだか慣れてきましたね」

「これも仕事だと割り切りました」

ぺたぺたと背中を触り、筋肉の付き方や感触を確かめる。こんなことしょっちゅうはできないから、あますところなく計測しておかないと。

「……翠さん、俺も抱きしめていい?」

不意にそんなことを言い出す誓野さん。

「いえ。まだそういうシーンではないので」

一方的にカヲルが抱きしめるシーン。〝彼〟は微動だにしない想定だ。

< 61 / 188 >

この作品をシェア

pagetop