敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「それと、今は物理的検証ですので、甘い声を出さなくて結構です」

恋人モードでさりげなく敬語を取ってくれた彼だけど。

このときのヒロインは、自分を守るためにゴロツキに殴る蹴るされた〝彼〟が心配で仕方がなく、ドキドキキュンキュンとか言ってる場合ではないのだ。採寸さえできればいい。

「では、俺は柱になりますね」

そう言った彼はなぜだか寂しそうだった。



体を測らせてもらったあと、私はひとり部屋にこもり黙々と執筆作業に取りかかった。

合宿も残り二週間。ここにいる間にひと通り書き終えたい。

「問題は……あれか」

思わず口に出してしまうほどの難シーン。ふたりが想いを通わせて、熱烈に抱き合う場面である。

「でも、あのシーンも感情が忙しないから、ドキドキって感じではないし」

功勲を立て侯爵から気に入られることで、男爵の爵位を得る〝彼〟。

とはいえ子爵家のカヲルが格下の男爵家に嫁ぐことは許されず、父親は大反対。

しかし〝彼〟に命を救われた侯爵が味方になり助けてくれる。

結果、カヲルは家を捨て〝彼〟のもとへ。

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