敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
私は熱くなった両頬を押さえながら「はい……」と小さく頷く。

「あの……こんな話のあとに言うのもなんですが、ひとつお願いが」

私はきゅっと膝の上で両手を握りながら、彼に向き直る。

「〝彼〟の名前なんですけど……。誓野さんの『勇』の字をいただいて、『いさむ』にしてもよろしいでしょうか?」

当初は大正時代に一般的だった義雄(よしお)を予定していた。だがなんとなくしっくりこないまま、今に至る。

ふと彼の名前『勇』を思い浮かべたとき、ぴったりだと思ったのだ。勇気の『勇』、勇敢の『勇』、まさに〝彼〟のイメージだった。

だがその時代に男性の名前で『ゆう』はハイカラ過ぎるので、『勇』と書いて『いさむ』と呼ぶことを思いついた。これなら時代背景にも馴染む。

誓野さんは驚いたように目を瞬いたけれど、すぐに微笑んだ。

「もちろん。光栄です」

快く了承してもらえて安堵する。この物語はカヲルが勇に恋をして人生を切り開く物語――うん、決まりだ。

「ありがとうございます。ひと通り書き上がって、安心しました。今夜はぐっすり眠れそうです」

< 65 / 188 >

この作品をシェア

pagetop