敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「あの、大変ありがたい申し出ではありますが……さすがに家事までお願いするのは申し訳ないなと感じておりまして……」

「ですが、前担当の吉川(よしかわ)はそうされていたと聞きましたが」

「それは、そのー……吉川さんは第二の母といいますか。学生の頃からお世話になっていたので。ちょっと特別で」

私のずぼらさをすべて知った上で、あらゆる面倒を見てくれた母のような姉のような恩人、吉川さん。

デビュー当時、私は二十歳でまだ学生だったから心置きなく甘えていたのだが、さすがに二十代後半で担当に家事までさせるのはいかがなものかと自覚している。

「それに、誓野さんは嫌ではありませんか? 文芸編集部に配属されたのに、ハウスキーパーまがいの仕事をさせられるのは」

「これも先生を支えるための大切な業務ですから」

「ですが、その……誓野さんは社長のご子息、なんですよね?」

そう、彼は私がお世話になっている北桜(ほくおう)出版の代表取締役社長、誓野(ごう)のひとり息子。いずれ北桜出版を背負うと目される人物だ。

吉川さんからそれを聞いたときは、腰が抜けそうになった。

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