敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「わかった。そうさせてもらう」

敬語をやめてそう答えた彼は、これまでに見せたことがないくらい生き生きとした表情をしていて、妙に胸が疼いた。

「じゃあ、茶の間でゆっくりして待っていてください。私が朝食を用意しますから――」

再び彼の背中を押してキッチンから追い出そうとすると。

逆に彼が私の手首を優しく捕まえて、ニッと口の端を上げた。

「悪いけど、プライベートの誓野勇は女性に料理を作らせてのんびり待ってるような男じゃないんだ」

そう言い切って、狡猾で頼もしい笑みを浮かべる。

どこか無邪気でもあって、それを見た瞬間、心が大きく揺れたのを感じた。



「――で、結局、誓野さんが全部作っちゃうなんて。今日の趣旨、わかってます? 恩返しですよ?」

目の前の豪華な朝ご飯を前に不満をあらわにすると「ユウ、ね」と訂正された。

今日は『誓野さん』ではなく『勇』と呼んでほしいとお願いされたのだ。

照れくさいけれど、自分から『無礼講』と宣言してしまった手前、了承せざるを得ない。

敬語もやめてほしいと言われたけれど、彼の方が年上だし逆に気を使ってしまいそうなので、このままで許してもらった。

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