敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
そんないつもより少々わがままモードな誓野さん――もとい勇さんは「全部じゃないだろ?」とさらなる訂正をする。

「一緒に作ったじゃないか」

「ほとんど誓野さんが――」

「ユ、ウ」

「……勇さんがやったじゃありませんか。手際がよすぎるんですもん。私、全然役に立てなかった……」

彼がテキパキこなしてしまったおかげで、手作りした感覚がない。大切な人のためにする料理が本当に楽しいのか――その検証はまだ果たせていない。

「わかったよ。なら、夜ご飯をお願い。昼はまた一緒に作ろう」

あまりにも嬉しそうに言うものだから、頷くしかない。

「……朝食を終えたら、なにかしたいこと、あります?」

尋ねてみると「うん。ある。やってみたいこと」とまたしても無邪気な顔をするので、私はどこまでも付き合おうと心に決めた。



食事の片づけを終えた私たちは、茶の間の畳に並んでころんと横たわった。

「やりたいことがお昼寝って、どういうことです?」

彼のまさかの要望に困惑する。

「だってこの二カ月、昼寝なんてしなかったから」

彼は仰向けの姿勢のままこちらに顔を向けた。

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