敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「湾先生、私のこと、なにか言ってましたか?」

「うん。湾先生も翠さんの新作が楽しみだって。これまでの作品も読んでくださっているそうだよ。古き良き純文学の系譜を継ぎながらも、時代に合わせた新しいテイストを取り入れている素晴らしい作家だって言っていた」

「えええ~♡」

あまりの嬉しさに飛び起きる。

文学の話題ではただのオタクに戻る私である。

想像以上のテンションだったのだろう、彼は困った顔でこちらを覗き込んでいる。

「嬉しい~! こんなことしていられない、私、ちょっと原稿確認してきます!」

「って、こら。今日は休憩する予定でしょ?」

「だって湾先生が待っててくれるんですよね!? 読んでくれるんですよね!? 一文字たりとも妥協できない。のんびりしている時間が惜しい」

落ち着かずそわそわとしていると、勇さんがすっと冷静な顔になり、押し殺した声で言った。

「……湾先生は、リラックスしてまどろむ時間こそ脳の活性化に大切だって言っていたよ」

「え? じゃあお昼寝します」

コロッと態度をあらため、胸の上に手を組んで目を瞑る私を見て、勇さんは「素直だな……」と呟きを漏らす。

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