敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
そこそこ豪華になったテーブルの上を眺めながら、勇さんが嬉しそうに息をつく。

「翠さん、お料理上手じゃないか」

大学からひとり暮らしをしていたくらいなので、やろうと思えばやれないわけではない。ただ料理をする時間があるなら本を書きたいと思ってしまうからやりたくないだけで。

いただきますをして肉じゃがを口に運んだ勇さんが、頬を綻ばせる。

「すっごく……おいしい。……本当においしい」

異常なほどかみしめながら食べている彼を見て、むしろ照れくさくなってくる。

「あの、そんなたいそうな料理ではないので、普通にサラッと食べちゃってください」

「ごめん、あまりにも幸せすぎて」

「勇さんが作るお料理の方がずっと上手だし、凝ってるじゃありませんか」

「いや、味付けどうこうの話じゃなくて……ああ、もちろん、味もおいしいんだけど」

肉じゃがのあとに味噌汁をすすった勇さんが、ごっくんと飲み込んで言う。

「料理が嫌いな翠さんがわざわざ俺のために作ってくれたと思うと、感無量で」

テーブルの上に並ぶ品々を見てしみじみ言う。

「この大根おろしも俺のためにおろしてくれたのだと思うと……」

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