敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
そのひと言に即座に反応する彼。

……自分でも墓穴を掘った自覚がある。

結局〝マッサージをして恩返し〟だったはずが、いつしか私がマッサージされる側になっていた。

「俺としたことが、どうして気づかなかったんだろう。こんなになるまで放っておくなんて、担当失格だ」

私を畳に座らせて、凝り固まった肩甲骨周辺を丁寧に揉みほぐしながら彼がしみじみ言う。

「そんなに酷いですか?」

「鉄板みたいだ」

「あははは」

整体院に通っていた時期もあるけれど、忙しさもあり行くのが面倒になってしまった。凝りをほぐすより、凝りと共存すべきだという結論に至ったのだ。

「そもそも、もっと早く勇さんが気づいていたとしても、私は体を触らせなかったと思いますし」

男性に触れられるのはちょっと……。出会った直後に『マッサージさせてほしい』なんて言われたら嫌いになっていたと思う。

「……今は、怖くない?」

その質問があまりにも気遣わしくて、私は苦笑する。

「男性が苦手だってことも、知ってたんですね」

きっとそれも吉川さんから聞いていたのだろう。

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