敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
初めて私の家にやってきたとき、いかにも真面目そうなリクルートスーツを着ていたのは、私のトラウマを呼び起こさないために吉川さんが伝授した作戦だったのかもしれない。
「……すみませんでした。知っていながら、男である俺が担当になってしまって」
敬語に戻ってしまった彼に「無礼講ですよ」とたしなめる。
彼は「……ごめん」と謝ってマッサージを続けた。
「結果オーライですね。おかげで新作が書けました」
もしかしたら吉川さんは、あえて男性を後任に指名したのかもしれない。
それを乗り越えなければ私は――石楠花みどりは成長できないと思って。そういうお節介なところがある人だ。
「苦手っていうか、過去にちょっとしつこい人がいて。やだなって思っただけなんです。そんなに深刻なやつじゃないですよ」
「充分深刻だ」
「でも、勇さんは大丈夫ってわかったので。もう怖くはありません」
そう口にしたとき、背中に触れていた彼の手がぴくりと反応した。
「怖くないなら……触れてもいい?」
恐る恐る、すごく気を遣いながら尋ねてくる彼に、胸の奥が熱くなるのを感じる。
以前だったら絶対嫌だと断っていただろう。
「……すみませんでした。知っていながら、男である俺が担当になってしまって」
敬語に戻ってしまった彼に「無礼講ですよ」とたしなめる。
彼は「……ごめん」と謝ってマッサージを続けた。
「結果オーライですね。おかげで新作が書けました」
もしかしたら吉川さんは、あえて男性を後任に指名したのかもしれない。
それを乗り越えなければ私は――石楠花みどりは成長できないと思って。そういうお節介なところがある人だ。
「苦手っていうか、過去にちょっとしつこい人がいて。やだなって思っただけなんです。そんなに深刻なやつじゃないですよ」
「充分深刻だ」
「でも、勇さんは大丈夫ってわかったので。もう怖くはありません」
そう口にしたとき、背中に触れていた彼の手がぴくりと反応した。
「怖くないなら……触れてもいい?」
恐る恐る、すごく気を遣いながら尋ねてくる彼に、胸の奥が熱くなるのを感じる。
以前だったら絶対嫌だと断っていただろう。