敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
『主役』、『石楠花先生』そう聞いてようやく彼女の正体に思い当たり、思わず「嘘だろ……?」と呟いた。
今年の大賞受賞作『信長の右腕』を執筆した石楠花みどり先生だ。それなりに文学に詳しい俺ですら舌を巻く、重厚な歴史ミステリーだった。
あの子が書いたのか? 本当に?
シリアスな人間ドラマと息をつかせぬ展開。そして情感たっぷりのきめ細やかな描写。
戦国時代の空気、乾いた土の匂い、鎧の質感、矢のずっしりとした重みと軸に滴る血液のどろりとした粘度まで手に取るように伝わってくる芸術的傑作だった。
あまりの繊細な描写に、これを書いたのはきっと気難しい人間に違いないなんて偏見を持っていたのだが。
まさか若い女性だったとは。
あの歳で、いったいどんな人生を歩んだらあんな文章が書けるんだよ。
受賞者の人となりは授賞式まで伏せられる。とくにSNS等で露出をしていない彼女の正体は謎に包まれていた。
だからこの日、二十歳の最年少受賞者・石楠花みどりが壇上で紹介されると、驚きと歓声で会場が湧いた。
受賞のひと言を述べるために、彼女が中央の演台に向かってとことこと歩いていく。
今年の大賞受賞作『信長の右腕』を執筆した石楠花みどり先生だ。それなりに文学に詳しい俺ですら舌を巻く、重厚な歴史ミステリーだった。
あの子が書いたのか? 本当に?
シリアスな人間ドラマと息をつかせぬ展開。そして情感たっぷりのきめ細やかな描写。
戦国時代の空気、乾いた土の匂い、鎧の質感、矢のずっしりとした重みと軸に滴る血液のどろりとした粘度まで手に取るように伝わってくる芸術的傑作だった。
あまりの繊細な描写に、これを書いたのはきっと気難しい人間に違いないなんて偏見を持っていたのだが。
まさか若い女性だったとは。
あの歳で、いったいどんな人生を歩んだらあんな文章が書けるんだよ。
受賞者の人となりは授賞式まで伏せられる。とくにSNS等で露出をしていない彼女の正体は謎に包まれていた。
だからこの日、二十歳の最年少受賞者・石楠花みどりが壇上で紹介されると、驚きと歓声で会場が湧いた。
受賞のひと言を述べるために、彼女が中央の演台に向かってとことこと歩いていく。