敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
悩ましく唸る吉川さん。彼女自身、離れがたいといった様子だった。

「俺に任せてもらえませんか」

意を決して頼み込むと、不安げな眼差しがふたつ、こちらに向いた。

「誓野さんに家事をさせるわけには……」

「それに、男性はヤダって本人が言ってるしねえ」

ふたりが口々に不安を漏らす。

「家事については問題ありません。男性が苦手な件については、本人次第ではありますが、俺が距離を保って接すれば克服するチャンスにもなるかと」

吉川さんが「確かに」とまんざらではない返答をする。

「作家としても、ある程度男嫌いを克服してもらわなければ困るんです。次回作のテーマは恋愛ものですし、少しくらい男性にときめく気持ちを持っていただかないと」

編集長も「そうだねえ。誓野くんなら、怖い感じはないし」と頷く。

「ぜひ俺にやらせてください」

力強くそう押して、彼女の担当を任せてもらった。



かくして担当として初めて彼女の家へ挨拶に行く日。

吉川さんの勧めもあり、あえて硬派な格好をした。伊達メガネとブラックのリクルートスーツ姿で真面目さをアピールして、彼女の家に向かったのだが――。

< 96 / 188 >

この作品をシェア

pagetop