敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
「石楠花先生はこれまでと同様、執筆に集中してください。家事はすべて私が。先生には新作の執筆に注力していただきたいというのが、編集部の総意です」

「そ、そこまで言うんでしたら……」

困った様子で了承する彼女。押しには弱いと見える。

「石楠花先生のお力になれるよう、精進いたします。遠慮なさらずに、気になることはなんでもご相談ください」

そう頭を下げ、なんとか彼女の担当として認めてもらった。というか、押し切った。

その後、粛々と彼女のサポートに徹していたが、なかなか心を開いてもらえない。

決して素の自分を見せてくれない彼女。

男性が苦手と言うだけあって、髪に触れるだけで凍りついてしまう。怯えさせないように丁寧に接していたが――。

……このままではよくないな。

彼女の書いた原稿を見てそう思った。とても綺麗に描かれているが、綺麗すぎるのだ。

まるで夢だけ詰め込んだかのようで、受賞作のときに感じた生々しさがない。

一般の読者が喜んだとしても、石楠花みどりのコアなファンが認めてくれるとは思えなかった。

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