野いちご源氏物語 一七 絵合(えあわせ)
源氏(げんじ)(きみ)姫宮(ひめみや)のご本心が読めなくて悩んでいらっしゃる。
上皇(じょうこう)様は女の姿にして拝見したいほど優美(ゆうび)でいらっしゃる。きっと姫宮とお似合いだろう。お年からいっても、(みかど)はまだ十三歳であられるのだから、上皇様との方が理想的なご夫婦になられるはずだ。なぜお相手が上皇様ではなく帝なのだと、姫宮は不愉快に思っておられるのではないか>
と、考えすぎて苦しくなってしまわれるの。
入内(じゅだい)当日になってどうこうできることでもないのだけれど。

姫宮の周りには、立派な女房(にょうぼう)たちがたくさんお仕えしている。
もともと、亡き六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)が美しくて優秀な女房を集めていらっしゃったから、理想的な入内になりそうなご様子だったわ。
<あぁ、御息所(みやすんどころ)が生きておられたら、はりきって姫宮のお世話をなさっただろうに。教養豊かで、趣味のよい貴婦人でいらっしゃった。見る人を驚かせるような見事なお世話をなさったに違いない。恋人としては今ひとつな点もあるが、趣味のよさだけで考えれば、あれほどの女性はなかなかいらっしゃらないだろう>
と、源氏の君は思い出される。

姫宮のことは信頼できる家来に任せて、ご自分は先に内裏へ行かれた。
いかにも父親代わりという顔をして姫宮を待つことはなさらないの。
上皇様にご遠慮して、帝へほんの少しご挨拶(あいさつ)を申し上げるだけ、というふりをなさっていたわ。
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