わたしのスマホくん


──買い物に行った店で、碧くんは涼しい、美味しそう、と色々なものに興味津々だった。

「食べれるの?」

ケーキのショーケースをのぞく碧くんは静かに首を横に振る。……でもちょっと残念そう、に見えなくないような。

「青空は、この中ならどれが好き?」
「え?うーんとね──」

ひとりの買い物じゃなくてわたしも楽しんでしまったけど、家に着いて部屋に行った矢先──


ずっと変わらないままいたのか、桃李くんはすぐに人の姿になり、可愛らしいお顔をめいいっぱいふくらまし、わたしたちを見上げた。

「新人がボクを置いてどっか行った!そらとの約束やぶって!」
「事情は青空に話したから大丈夫だよ」
「お母さんから買い物たのまれて……碧くんが伝えに来てくれたの」

と言っても、桃李くんの頬はふくらんだまましぼむことはなくて。

「……ボクもそらとお出かけしたい。学校も行きたい。時間くらいならボクだって教えられるもん」

すねた顔がまた可愛い。

「そら、聞いてる?」
「き、聞いてるよっ。夏休み前ならはやく終わる日あるし連れて行くね」
「ほんと!?やったぁ!」

それまでは、時折2人のお留守番や、桃李くんだけのお留守番を頑張ることを約束にわたしは夏休み前にスマホ2台……2人を学校に持っていくことにした。
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