勇気の歌(Summerloveの前の話)
「結局はイジメをするやつは低脳。
知能が止まったままの中二病子供なんだよ」
頼んだ焼き鳥を手にとって、固くなった皮を口に含む。
「この世は弱肉強者だと完全に信じている輩が多い。
それがこの学校の特徴だ」
「そんな、言わんでも……」
「仕方ないだろ?
自分より弱いものを支配したいだけ。
どこぞのフランスの貴族気取り野郎が多いんだよ」
置いた瞬時、水グラスが揺らぐ。
早羽が肩をさすったが、相手の気持など知ったことではない。
隣のカップルが、鼻で笑う。
「でも、俺らは言い返せるだけの力がある。
そんな理屈考えても解決にはならへんな」
早羽が水を注いだコップを、俺に差し出した。
「問題は「勇気」やで。
どうあいつを、支援していくかやで」
勇気という言葉を耳にした時から、一瞬にして殺意は萎えた。
全身から魂が抜けていくように、背もたれに預けた。
その様子を見て、早羽は苦笑。
酒を一口つけたが、やっぱりいい気はしない。
心苦しい思いが、口の中を走る。
隣のカップルが居酒屋でキスをしそうな雰囲気を醸し出していたのもあった。
カラカラになったジョッキを「ドン!!」と強く置いた。
カップルはおののいて、何処かへ。
「他人に八つ当たりするなや」
「公共の場所だ。
しかも勇気の話はするのは、卑怯だ」
カタリとおとそを置いたが、早羽にため息を吐かれる。
「事実なんやから仕方ないやろ」
「あれは例外だ」
「まぁ、まぁ二人とも。
気をはらないで」
「無理だろ」
「でも仕方ないでしょ?
こういうのって、ゆっくり考えて向き合わなきゃいけないんだよ?
「教師」なんだから」
教師として報われないのになぜ、あの生徒を助けないといけない?
あの生徒を俺は、世界一嫌いな自信があるだけだ。
焼き鳥の旨を食べようとして、落としてしまった事へのイライラも募った。
「死んでしまえばいいんだよ。
あんなヤツそれか殺されればいい」