血だまりに咲く。 ~序
和やかな雰囲気の中、黒いスーツの桜井さんは凛として、はっきり輪郭が見えてるというか。端正な顔立ちで、若とは種類の違う男前なひとだと思う。でもまだ独り身だったような。今は組が優先なのか、縛られたくないのか。
なにかと声をかけてくれるのは、兄さんと高校の先輩後輩だったからだ。慕っていた桜井さんの後を追うように、兄さんも極道の世界に足を踏み入れた。前はよくご飯をごちそうしてもらったり、海やテーマパークに連れてってくれたこともあった。
縁があって兄さんは名取で杯を受けたけど、わたしにとって桜井さんはもう一人の兄というよりは、恩師・・・みたいな存在かもしれない。
短い挨拶を交わして台所に戻り、洗い物をしながらぼんやり思いを巡らせる。来週の十七日はちょうど兄さんの月命日だ。住む部屋を決めてくるついでにお墓も寄ろう。
名取を出ることを兄さんと、それから桜井さんにも報告しよう。・・・独り立ちしたら、もう桜井さんと会うこともないんだろうな。湧きあがる心細さみたいな感傷を飲み込んで手を動かした。
兄さんがいなくなった時、いずれこんな日がくることを覚悟した。とうとう独りぼっちになる。これからは自分の力で、誰にも迷惑をかけず生きていくんだ。
遠くから、若の絶えない幸せだけを願って。
なにかと声をかけてくれるのは、兄さんと高校の先輩後輩だったからだ。慕っていた桜井さんの後を追うように、兄さんも極道の世界に足を踏み入れた。前はよくご飯をごちそうしてもらったり、海やテーマパークに連れてってくれたこともあった。
縁があって兄さんは名取で杯を受けたけど、わたしにとって桜井さんはもう一人の兄というよりは、恩師・・・みたいな存在かもしれない。
短い挨拶を交わして台所に戻り、洗い物をしながらぼんやり思いを巡らせる。来週の十七日はちょうど兄さんの月命日だ。住む部屋を決めてくるついでにお墓も寄ろう。
名取を出ることを兄さんと、それから桜井さんにも報告しよう。・・・独り立ちしたら、もう桜井さんと会うこともないんだろうな。湧きあがる心細さみたいな感傷を飲み込んで手を動かした。
兄さんがいなくなった時、いずれこんな日がくることを覚悟した。とうとう独りぼっちになる。これからは自分の力で、誰にも迷惑をかけず生きていくんだ。
遠くから、若の絶えない幸せだけを願って。