カラフル
 お惣菜とインスタント味噌汁と洗って盛り付けただけのサラダの並んだ食卓を囲んで、2人で手を合わせる。

「あ」

 何か思い出したのだろう。蘭が小さく声を漏らす。


「明日から帰るの遅くなるから。毎日、実行委員会あるんだって」

「そう、分かった」

「あ、でもあんまり関係ないかぁ。凛も同じくらい遅くなるだろうし」

 蘭の言葉で自分が改めてパネル責任者を任せられたことを実感する。


「晩御飯の用意とか献立とか気にしなくていいからね? あたし1人でもなんとかするし」

 まさか自炊とかしないよね? 蘭がキッチンに入るととんでもないことになりそうだとゾッとする。『なんとかする』という言葉に若干恐怖を覚えながらも、気遣ってもらったことに対してとりあえずお礼を口にする。


「でも……まさか凛がパネル責任者引き受けると思わなかった」

「市長賞とかって、自分も推しといてよく言うよ」

 蘭が「なかなか説得力のある一言だったでしょ?」とへらっと笑う。その様子を見ながら、味噌汁の入ったお椀に口を付ける。


「でも……あたしがどう言ったかなんて正直関係ないでしょ? 陽くんが言ったからでしょ?」

「え?」

 正面を見据える。


「凛は、陽くんが好きなの?」

 予想していなかった突然の質問に、飲んでいた味噌汁が気管に入る。ゴホゴホと咳払いをしながら「そんなわけないでしょ」と慌てて返答をしたが、蘭は腑に落ちない表情でこっちを見る。


「でも仲は良いじゃない?」

「別に良くない」

「うっそだぁ」

 彼女はふっと口角を上げる。


「こないだ日直でね、数学のノートを運んでいるときに偶然見えちゃったんだ。数学準備室の横の階段のとこ、中庭がよく見えるんだよね」

 心臓が波打つ。
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