歪んだ月が愛しくて3
「……何でお前がそこにいる?」
頼稀の姿をその目に捉えた会長は先程よりもワントーン低い声を出す。
そしてそんな会長を微塵も気にしていない頼稀が更に追い討ちを掛ける。
「何でって用があるからに決まってるじゃないですか。それに俺だけじゃありませんよ」
「あ?」
足音が増える。
頼稀の後ろから顔を出したのは……てか、ここに全員集まる必要ってある?
「やあ」
「こんばんは」
「………(睨)」
「チッ、“B2”か…」
「そう言うことです。分かったらお引き取り下さい、今大事な話の途中なので」
「大事な話?“鬼”の話でもしてたのか?」
「「っ!?」」
会長の言葉に汐と遊馬が分かり易く警戒心を露わにする。
それを感じ取った会長が2人を視界に捉えて目を細める。
……いや、ここ玄関前ね。
こんなところで喧嘩勃発とかマジやめてよね。
しかも君達声でかいから。もう少しボリューム落とそうよ。普通に隣の希に聞こえるわ。
「……ああ、そう言えば君は知ってるんだったね」
「だったら何ですか?そっちには関係ありませんよね?」
「お前等には関係あるって言うのか?」
「うちのトップが白夜叉のストーカーなのはよく知ってるでしょう。そのストーカーが俺達に命じたんですよ、白夜叉の護衛をしろってね」
「………」
チラッと、会長の視線を感じる。
でも俺は何も言わなかった。
それをいいことに頼稀が話を続ける。
「本人が了承せずとも上の命令は絶対なんでね。だからアンタの出る幕じゃないんでおとなし…「なら、俺にも無関係な話じゃねぇな」
……は?
会長の言葉に首を傾げる。
頼稀も「あ?」と怪訝そうに表情を歪めた。
「首突っ込むのは構わない、って言ってたもんな」
そう言って会長は真っ直ぐに俺を見つめた。
『調べるのは構わない。でも手出しはさせない。例え会長でも…』
……あ。
「ち、違う!あれは…っ」
「違わねぇよ。調べるのは構わないってことは手さえ出さなかったら何してもいいって意味だろうが」
「全然違うからね!その解釈強引過ぎるから!」
「安心しろ。お前の獲物を横取りする気はねぇから」
「そうじゃないっ!!」
俺は頼稀の身体を押し退けて会長に詰め寄った。
「てか会長声でかいから!普通にバレるし!もう少しボリューム落としてよ!」
「どう見てもお前の声の方がでけぇよ」
「ああもう!いいから入って!」
とりあえず全員を部屋の中に押し込めてバタンとドアを閉める。
それがいけなかったのか、誰かさんのドス黒いオーラが室内に充満しているのが分かる。
「……どうやら話し合う必要があるみたいだな」
「へっ!?な、何の話!?」
「さんせー」
「偶には俺達も参戦させてね、頼稀くん」
「ねぇ待って!それって本当に話し合い!?頼稀は平和的解決推奨派だったよね!?」
「俺はな」
「ごめんね立夏くん、俺達は頼稀くんと違ってそう言う約束はしてないから」
「俺達はバリバリ武力行使推奨派だよ!」
「威張って言うことじゃないよねそれ!?」
「アゲハさん」
「ふむ、君の好きなようにしたまえ」
「ま、待って…、これには深い事情があってね。会長だって別に本心じゃないはずだからちょっと皆落ち着いて話し合おうよ…」
「嘘は言ってねぇよ」
「お願いだから黙ってて!!」
アンタが喋ると余計ややこしくなるんだよ!
態とか!?態と煽って楽しんでんだろう!?