歪んだ月が愛しくて3
「てか、やっぱり女の子だったんだ…」
ぽつりと、無意識に漏らした独り言に希は二ヒヒと悪戯っぽく笑った。
「眼鏡ちゃんのおめめは節穴かぁ?こんなボンキュボンのナイスボディ見といて今更それ言う?」
「ナイスボディ……は一旦置いといて、他にこのこと知ってんのって頼稀だけ?」
「うん。まあ、中には気付いてる人もいると思うけど、着替え見られたのも自分から話したのも立夏だけだよ」
「え、地味に攻撃されてる?やっぱ怒ってんじゃん」
「タダじゃないって言ったっしょ?暫くこれネタにさせてもらうから」
「やめて!頼稀に殺される!」
「ふははっ、大袈裟だなぁ!だーいじょうぶ!頼稀は俺と立夏にだけは甘々だから!」
「何が大丈夫なの!?その根拠はどっから来るわけ!?希に優しいのは分かるけど俺なんて瞬殺もんだよ!笑い事じゃないからね!」
「チッチッチ、分かってないな眼鏡ちゃんは。あの頼稀を振り回せる人間なんて早々いないんだよ。今のところ俺と寮長と立夏だけだし…、あの神代会長でさえ手を焼いてんだから相当なもんよ、自信持ちなって」
「いや、そんなこと言われても…」
それとこれとは話が違くない?
だって俺、希の秘密知っちゃったんだよ?
下着姿見ちゃったんだよ?
その経緯を話したら確実にぶん殴られるよ。
下手したら後ろから刺されるかもしれないのに暢気に笑ってるとか鬼じゃん。鬼畜じゃん。
前々から思ってたけど、希のそう言うところは嫌いじゃないし寧ろ好きだけど、それによる弊害がいざ我が身に降り掛かって来ると思うと暢気に笑っていられないんだよな。
「……本当、分かってないよね立夏は」
ふと、そんな言葉が降って来た。
それはどこか寂しそうで、希らしくない声だったから思わず目を瞠った。
「前は、俺だけだったのにさ…」
「の、ぞみ…?」
先程までのおちゃらけた態度は一変し、切なげに目を細めて苦笑した。
憂いを帯びたその表情に目の前にいる希が知らない人のように思えた。