歪んだ月が愛しくて3



「立夏はさ、もう少し自分の価値を見直した方がいいよ」

「価値?」

「どうして頼稀が口煩くお節介焼くと思う?どうして頼稀が人目も憚らず必死になると思う?それはね、それだけ立夏のことが大切だからなんだよ」

「………」



最近よく耳にするフレーズに一瞬眉を顰めた。
でも希が「勿論俺にとってもね!」と歯を見せて笑うものだからすぐに引っ込めたけど。



「でもぶっちゃけるとさ、俺初めは立夏のことがスゲー羨ましかったんだよね。転入して来たばっかで初対面のはずなのに頼稀に気に掛けてもらえる立夏がさ」

「……どうして?」



その質問に希はきょとんと目を瞬かせたかと思うと、ふはっと綺麗に笑った。



「だって俺もずっと前から好きだったから、頼稀のこと」



その笑顔と突然の告白に条件反射みたいにドキッと胸が高鳴った。



……ああ、その顔。

やっぱり女の子なんだなって改めて実感した。



その顔は恋する乙女そのものだった。



「だから聖学に来たの。頼稀と一緒にいたかったから追っ掛けて来ちゃった」

「え、マジ?」

「マジマジ」



とは言え、性格は乙女に程遠い気がする。



だって普通それだけのために男子校に来るか?共学じゃない、男子校だよ?

女であるリスクを背負って態々男装までして…。

大胆と言うか無鉄砲過ぎるだろう。



「当然頼稀には怒られたよ。てか、ガチギレされた。下手したら絶交もんだったけど、……でも俺の場合は自分から追い掛けなきゃあっちは待っててくんないと思ったし、実際に置いて行かれたしね。それなのに頼稀は自分から立夏を追い掛けた。他人を寄せ付けないように自分から距離を取ってた立夏に自分からしつこくアタックしてて、それで結局立夏もそんな頼稀に絆されてんのが分かって…、ずっといいなって思ってたんだ。俺の時とは全然違うんだもん、ウケるよね」

「……希、念のために言って置くけど、俺と頼稀はそんなんじゃないよ。寧ろ頼稀は…」

「あー…大丈夫、その辺のことはちゃんと分かってるから。頼稀が立夏のことを気に掛けんのは恋愛感情からじゃないって。要は寮長みたいなもんでしょう?俺が言いたかったのはさ、別に頼稀と立夏のことを怪しんでるとかそう言うんじゃなくて、そんだけ立夏は周りから大切にされてるんだよって言いたかったわけ」



ビシッと、希の人差し指が俺の胸を突く。



「だから、早く気付いてやってよ。そうすりゃ頼稀も少しは報われると思うから」



……大胆で、無鉄砲で、はっきり言って無茶苦茶だ。



やっぱり俺には真似出来ないよ。



そう思ってしまうくらい希は真っ直ぐで、眩しくて、勇気があって。



こうやって真正面からぶつかって来るところに頼稀も惹かれたんだろうな…。


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