歪んだ月が愛しくて3
「……それは、頼稀のため?」
「うふふっ、さあどうでしょうね〜」
可愛いな、おい。
希の秘密を知っちゃったせいか、女口調で喋られるともう女の子にしか見えなかった。
「あのさ…、さっきからずっと気になってたんだけど、希と頼稀って付き合ってんの…?」
「付き合ってないよ」
「えっ、つ、つつ付き合ってないの!?何で!?」
「そんな驚く?何でって言われてもな…。そう言うのってどっちかが告って初めて恋人同士になるわけじゃん。俺頼稀に告ったことないし、あっちからも告られたことないからさ」
「で、でも、希は好きなんだよね頼稀のこと…?それなのに告白しないの?」
「うん、好きだよ。でも今んとこ告るつもりはないかな」
「……何で、って聞くのは踏み込み過ぎ?」
「ふはっ、何遠慮してんの?俺と立夏の仲じゃん。そう言うの気にしなくて良くない?」
「そ、なの…?」
「そうだよ。だって立夏は俺が女だってこと知ってんだよ。隠す必要ねぇじゃん」
「まあ、希がそう言ってくれんなら聞いちゃうけど…。何で告白しないの?頼稀が希のこと大切に思ってんのは分かってんでしょう?だったら…」
「知ってるよ。頼稀が俺のこと大切に思ってくれてることも、俺を異性として好きだってこともね」
「っ、……気付いてたの?」
「ずっと一緒にいるからね。それなのに何で告んないのって思った?まあ、そんな深い理由はないんだけど、強いて言うなら復讐かな」
「復讐?」
「俺に何も言わずに勝手にいなくなった罰だよ」
一瞬、ドキッとした。
自分のことを言われているようで内心動揺したが、それを悟られるわけにはいかなかった。
「だから俺からは絶対言ってやんねぇの」と、希が拗ねたような表情を見せる。
―――罰、か。
……そう、だよな。
これが罰なら罪は償わなくちゃいけない。
『…ごめん、シロ……』
脳裏に過ぎる公平の声に、固く目を閉じる。
あの日が近付いているせいで余計なことばかり思い出してしまう。
感傷に浸ってる暇なんてないのに…。
「それに別に今じゃなくてもいいかなって思ってんだよね。俺としては死ぬまで頼稀と一緒にいるつもりだし、頼稀が俺以外の女を選ぶわけないからそう言うことは寮生活が終わってからでも遅くないかなって。頼稀だって今は色々と忙しいはずだからさ…」
「……頼稀のこと、ちゃんと分かってんだね」
「こう見えても頼稀一筋10年だよ。そんじょそこらの女には負けないよ」
「ふはっ、すっごい自信」
……そうだ。
余計なことに気を取られてる暇はない。
これから起こることについて色々と備えて置かなきゃいけないのに、……何でかな。
希が放った何気ない一言が、妙に頭に残って離れてくれなかった。