歪んだ月が愛しくて3
『シロー、今日何食べたい?』
『……何で?湊さんいねぇの?』
『そうみたい。何か残業で遅くなるっぽいから飯は各自でって連絡来た。だから今日は俺が飯係な』
『あ?お前飯作れんのか?』
『飯だけじゃなくて家事一通りは出来るよ、ヤエちゃんと違ってね』
『ハッ、誰もテメーなんかと主夫力競ってねぇよ。俺が言ってんのはちゃんとシロが食えるもん作れんのかって聞いてんだよ』
『モーマンタイ。それどころかシロの胃袋掴んじゃってるからもう俺か姉ちゃんの飯以外食えないってさ。ねぇ、シーロちゃん?』
『ハク、今日何食いたい?』
『え、シロちゃん無視?無視なの?俺のこと見えてないのかなー?』
『お、俺は…、シロさんが作って、くれるものなら、何でも…』
『いや、俺じゃなくて公平な。湊さん今日いないんだって。カイは何食いたい?』
『シロが作ってくれたカレー……みたいなカレー』
『お前等、遠回しに俺に作れって言ってる?』
『あれは美味』
『美味し、かった、です…』
『そりゃどーも』
『……うん、君達一旦俺の話聞こうか?今は俺のターンだよ?』
『待って、何その話?シロがカレー作ったの?は?聞いてないんだけど?何で俺だけ食べてないわけ?』
『ざけんな。俺も食ってねぇぞボケ』
『ボケてねぇよ。何でって…、偶々2人がいなかった時に作ったからじゃねぇの?覚えてねぇけど』
『覚えてないってことは結構前の話ってこと?何でコイツ等だけ食べて俺だけ食べてないわけ?意味分かんないんだけど』
『おい、クソナツ。テメーさっきから俺の存在無視して話進めてんじゃねぇぞ』
『あえて見ないようにしてんだから話し掛けないでくれる?てか、元を正せばアンタのせいだから無視してんだよ。俺とアンタがいない時って確実にそっちの仕事関係じゃん。アンタがこき使うせいでシロのカレー食べれなかったんだけどどうしてくれるわけ?責任取ってよ』
『だから食ってねぇのは俺も同じ…『アンタは自業自得だからいいんだよ』
『いや〜ん、ナッちゃん辛辣ぅ〜』
『黙れクソハチ。シロにカレー作ってもらったからってマウント取ってんじゃねぇよ』
『いやぁ、あれは本当に美味しかったな』
『美味』
『シロさんのご飯、食べれて、俺幸せです…』
『死ね、マジで地獄に堕ちろシロ以外』
『まあまあ、カレーくらいでそんな怒んないでよ。ナッちゃんがちょっと可愛くおねだりすればシロはいくらでも作ってくれるって』
『……………ほんと?(上目遣い)』
『あ、………ああ』
『おい、テメーやけにナツには甘いな。お前がそんなんだからいつまで経ってもコイツが育たねぇんだよ』
『甘い、か…?』
『クソ甘々だわボケ』
『何、嫉妬?俺だけシロにカレー作ってもらえんのがそんなに羨ましいわけ?まあ、アンタも地面に頭擦り付けて可愛くおねだりすればシロも作ってくれんじゃない?』
『寝言は寝て言えクソガキ。誰がそこまでしてコイツが作ったもんなんか食うかよ。例え雪山で遭難して死ぬほど腹が減ってても食わねぇはそんなもん。残飯処理はテメー等でしとけボケ。まあ、シロがどうしてもって言うなら味見くれぇならしてやらないこともねぇけどな』
『安心しろ。テメーには一生食わせねぇから』
『な、何でだよっ!?人が下手に出りゃ付け上がりやがって!!』
『どこが下手?』
『ぶはははっ!!ヤエちゃんリアルジ◯イアンかよ!!てか拗らせ過ぎでしょ!!どんだけシロちゃんのこと愛し…『テメーは黙っとけクソハチ公!!』
『まあ、シロには1ミリも伝わってないけどね』
『ヤエちゃんオッツゥ〜☆』
『乙』
『フッ…(ざまあ)』
『………(どうでもいい)』
『テメー等マジでぶっ殺すぞ!?』
……どうしても、捨てられない。
だって俺はまだあの日に縋っているから。
脳裏に駆け巡った情景に、ただ苦笑することしか出来なかった。
そんな俺を見て希が何を思うかも知らずに、ただただ口元に力を入れていた。