歪んだ月が愛しくて3
未空Side
いやぁ、可愛かったな。
マスクを目元まで上げてズカズカと足音を立てながら少し前を歩くリカの後ろ姿に、口元が緩みっぱなしでヤバい。
油断してたんだろうな。呆気に取られて、少し目元を赤く染めたあの顔が忘れられない。
本当、可愛いよ。
可愛くて、誰よりも綺麗で凛として。
そんなリカを知る度にどんどん好きになっていって、自分だけのものにしたいって気持ちが溢れちゃいそうなんだよ。
(でも、リカはきっと…)
きっとリカは気付いてないんだろうな。
隙がなさそうに見えて案外抜けてるところがあるあの子は、俺がどんな目でリカを見てるのか全然分かってない。
この気持ちを自覚した時から俺はリカをそう言う目で見てるし、出来ることなら自分のものにしたいっていつも考えてんだよ。
そんな男の前であんな顔するなんて…、無防備にも程がある。
ここが外で良かった。
だってもしここが密室で2人っきりとかだったら絶対手握るくらいじゃ済まなかったもん。我慢してるんだよ、こう見えても。
でもリカのことが好きって気持ちと同じくらい嫌われたくないって思ってるから無理矢理踏み込むことはしたくないし、リカにとっての俺が親友ポジションだってこともちゃんと分かってる。
だから、正直吃驚した。
あんな可愛い顔を俺に見せてくれたことが、嬉しくて堪らない。
ねぇ、リカ。
俺ね、リカが本当は誰のことを想ってるのか、分かってるんだよ。
分かってるけど、だからってリカを諦める気は全然なくて、隙あらば邪魔してやろうとか俺のこともっと意識してもらおうとかそんなことばっか考えてる。
……ダサいよね、俺。
バカみたいに必死過ぎて、カッコ悪いところしか見せてない。
それでも俺はリカのことが好きで、どうすればリカの気持ちが俺に向くのかそれしか考えられないんだ。
親友失格…?
ふはっ。
笑っちゃうよね。
例えそのポジションを失ったとしても、それでもリカのことが欲しいなんてさ。
「―――あれ、未空くん?」
その声にピタッと足を止めて振り返る。
こんなところで名前を呼ばれると思っていなかったから一瞬驚いたけど、よく考えたらその声には聞き覚えがあった。
「……アオ?それと、モリモリだっけ?」
振り返ると、そこにはアオと前に一度だけ会ったことがある杜山くんがいた。
アオは俺を見つけた途端「やっぱり未空くんだった!」と顔を綻ばせて近寄って来たけど、反対に杜山くんの方は嫌そうに顔を歪めていた。
何その顔、おもろ。