歪んだ月が愛しくて3
「と、ところで、2人は今来たところなの?もし良かったら一緒に回らない?」
態とらしく咳払いをするアオが気を取り直してそんなことを提案する。
「何言ってんの?俺達デートだって言ったじゃん。俺とリカのラブラブな時間を邪魔しないでよね」
「ラブラブ…?」
「ラブラブでしょう!だってさっきリカ俺が手繋いだら顔真っか…「あ゛あぁあああ!!!」
「ねっ、俺達ラブラブでしょう!」
そう言ってウインクするとアオは「うん、そうだね。ごめんね2人の邪魔しちゃって」と苦笑した。
反対にリカは「何納得してんだよ…」と恨めしげな視線をアオに送っていた。
「てかさ、そっちだってデートなんだから気軽に他の男誘っちゃダメじゃん。アオの浮気者」
「うわ…っ!?だ、だから僕達はそんなんじゃないって言ってるでしょう!もうっ未空くんの分からず屋!」
「カッチーン。誰が分からず屋だって?アオはいつからそんな生意気なこと言うようになっちゃったのかな〜?」
「だ、だって、未空くんが僕の話聞いてくれないから…っ」
「あれ、まだ言うの?懲りないなぁアオは。……そんな悪い子にはお仕置きしなきゃね(黒笑)」
「ヒィッ!?た、助けて立夏くん!!」
「あー…」
「あはははっ、アオがリカに助けを求めるとか100年早いんだけど。お仕置きけってーい」
「理不尽!?」
ジリジリと詰め寄ると、アオは顔を真っ青にして人混みの中に逃げ込んだ。
まあ、そんな簡単に逃がしてあげるわけもなく、亀のように足が遅いアオを捕まえるのは簡単だった。
捕まえたら勿論くすぐりの刑だよね。当然だよね。だってアオくすぐられんの弱いし。
それに普段は可愛い系で通ってるアオがくすぐられると何故か「ウヒャヒャヒャッ!!」と下品な声を上げることを知ってるからあえてこの刑にしたんだよね。だってこんな顔好きな人には見られたくないもんね。
だからモリモリにはドン引いた顔を期待していたんだけど、当の本人はお仕置きされてるアオに見向きもしないで何故かリカと話し込んでいた。
何てことのない光景。
友達が、友達の友達と話している。
それだけなのに何故かその光景が目に留まって思わずアオをくすぐっていた手を止めた。
そんな俺に気付いたアオが俺の視線の先を目で追ってぽつりと呟いた。
「―――未空くんは、立夏くんのこと好きなんだよね」
疑問系じゃない。
確信があるような口調でアオはそう言った。
「好きだよ」
だから、俺も即答した。
リカを想う気持ちは誤魔化したくなかったから。
そもそもアオは俺の気持ちを知ってるくせに何で今更そんなこと聞いて来たんだろう。
答えが分かりきってる質問ほど無意味なものはないと思うんだけど。
「……じゃあ、もし…もしもだよ。立夏くんが殺人犯だとしても、それでも未空くんは立夏くんのことを好きでいられる?」
「………」
らしくない質問だと思った。
俺の本心を探るような視線。
アオらしくない猜疑心に満ちた瞳。
それなのに、自分からそんな質問して来たくせに、何でそんな泣きそうな顔してんのかね。
……何だかなぁ。
「はぁ…」
「、」
無意識に出た溜息にアオの肩がビクッと跳ねた。
「それを聞いて、アオはどうするの?」
「え…」
「答えたところでそれはあくまで俺の答えだよ。アオのじゃない」
「………」
それって答える意味ないでしょう、って内心思う。
何を心配してんのか知らないけど、だからって俺に答えを求めるのは間違ってるよ。
だって大切なのはアオがリカをどう思ってるかってことじゃないの?
俺の答えを聞いたって何の参考にもならないよ。
だって俺とアオではそもそも好きの部類が違うんだから。