歪んだ月が愛しくて3
でもアオに変な質問されてちょっと考えてみた。
もしリカが殺人犯だったら?
それって自首を勧めるか、逃げるのを手助けするかってこと?
んー……そう考えると究極の選択かもしれない。
普通に考えたら悪いことしたら刑務所に入って罪を償わなきゃいけないんだろうけど、そうしたら長い間リカに会えなくなっちゃうし、刑務所のご飯はクソマズって聞くからそんなもんリカには食べさせたくないし、万が一俺の目の届かないところでリカが変態野郎共の餌食になっちゃったらって考えると………うん、決まった。
「リカの逃走を手助けしよう!」
「へ?」
「もうこれしかない!逃走一択!海外がいいよね!そこで俺とリカは2人で仲良く暮らすんだぁ!」
「と、逃走…?一体何のこと…」
「だからリカが殺人犯だったらって話。自首させるか逃走を手助けするかってことでしょう?俺はリカが捕まらないように使える権力全部駆使してリカの逃走を手助けするよ。そうすればリカとずっと一緒にいられるじゃん」
「………」
リカと2人だけの逃避行とか最高じゃん。
誰にも邪魔されずにずっと一緒にいられるってことだもんね。
そしてあわよくばリカと……うん!やっぱこれっきゃない!
そんな俺の答えにアオは不満げな顔を見せる。
「……殺人犯、だよ?ただの万引き犯とかじゃないんだよ?それでも立夏くんのことを助けるの?」
「助けるよ。まあ、リカは自分から助けてなんて言ってくれないだろうけど」
「助けを求めない人を助けるの?そうまでして立夏くんと一緒にいたいの?」
「いたいに決まってんじゃん。何当たり前のこと聞いてんの?」
断言すると、アオは有り得ないと言いたげな顔を見せた。
まあ、優等生のアオには俺の考えなんて理解出来ないか。
きっとアオだったら自首を勧めるんだろうな。それが正解で世間の常識なんだろうけど、生憎そんな常識は習ってないから従う道理なんてないし、世間に後ろ指差されたって痛くも痒くもないからどうだっていいんだよね。だって俺の常識って“神代”だもん。
だから、最低でもいいんだ。
実際俺って最低な人間だし、それを自覚しててもこの考えを変えるつもりはなかった。
アオだって知ってるでしょう?
人間ってさ、そう簡単には変われないんだよ。
『他人の痛みって言うのは、後悔しないと気付けないこともあるから…』
……でも、リカのことに関しては別。
リカの前では嘘偽りのない自分でいたかった。
それがこんな俺に心を砕いてくれた立夏に対する誠意だと思うから…。
「おーい、そろそろ戻って来なよ」
そんな声が聞こえてリカ達の方に視線を戻すと、俺達に向かって手を振るリカとブスッとした顔で俺を睨み付けるモリモリが見えた。
ふーん…。
何だかんだ言ってちゃっかり嫉妬してんじゃん。安心したよ。
「ほら、2人が待ってるから戻ろう」
そう言ってアオのことを待たずに我先にとリカの元に走った。
いくらモリモリがアオのこと好きだからって、やっぱ俺の知らないところでリカが他の男と喋ってんのは面白くないんだよね。
だから、俺は気付かなった。
走り出した俺の背中に向かってアオが何と言っていたか。
目の前のリカに夢中になっていた俺には全く聞こえていなかった。
「自首か逃走って…、それって好き一択しかないじゃん…」