歪んだ月が愛しくて3



「あ?誰がガキだって?」

「だから俺やこの子なんかよりもお前等の方がずっとガキだって言ってんだよ!何だよ証拠って、バカじゃねぇの?」

「っ、テメー!ナメたこと言ってんじゃねぇぞクソガキ!俺達が誰か分かってそんな口聞いてんのか!?」

「この2人は元“青龍”のメンバーだよ。悪いことは言わないから謝っちゃいなよ」

「そうだよ。この可愛い顔がボコボコにされちゃうなんて勿体無いよ〜」

「だからなんだよ。“青龍”か何だか知らねぇけど、ダセーことしといて謝りもせず暴力で捩じ伏せようとしてる連中に何で俺が謝んなきゃいけねぇんだよ。謝るのはお前等の方だろう、この子にな」

「ナメたこと言いやがって!」

「……ちょっとお灸を据えてやった方がいいみたいだな」

「ハッ、出来るもんならやってみろよ」



リーダー格っぽい男に胸倉を掴まれた未空は、男達の脅しなんて屁でもないようで更に挑発を続ける。
未空の魂胆は何となく分かるし男達を懲らしめてやりたいって気持ちも分かるんだけど、そもそも未空って喧嘩出来たっけ?
このまま行くと殴り合いの喧嘩に発展する流れだけど大丈夫なのか?





……いや、大丈夫か大丈夫じゃないかの前に俺が無理。





だって未空に向かって拳が飛んで来た瞬間、身体が勝手に反応してしまった。



咄嗟に弾を装填してあった銃に手を伸ばして、未空に殴り掛かろうとする男の額に銃口を押し当てた。





「ねぇ、何やってんの?その子俺の連れなんだけど」

「、」





本物の銃ではないと分かっているはずなのに、冷ややかな声と相まって男達の身体が面白いくらいに動かなくなる。
それでもやっぱり本物じゃないから辛うじて口だけは動くらしい。





「お、いおい…、そんなおもちゃの銃で、な、にカッコ付けて…」





チッ、と舌打ちをすれば連中がビクッと震えた。





「―――離せ」





低い声と共に一睨すれば、男達がヒィッと情けない声を出す。
先程まで未空に頬を染めていた女達も男達の後ろに隠れて青褪めた表情を見せた。
そんなのには気にも留めず俺は未空の胸倉を掴んだままの男の腕を捻り上げた。





「いっ、ぎゃぁああ!!お、折れる折れる、やめてくれ!!」





喧しく喚く男を冷たい目で一掃して、そのままその横っ面に肘を打ち込む。
ごふっと言う声と共にリーダー格の男は呆気なく地に伏せた。





「未空、大丈夫?」

「は、はわわわ…っ」





はわわ?

未空の顔を覗き込めば、頬を染めて目をハートにさせていた。



……何で?



首を傾げると、未空は「う、うぁ」と変な声を上げて悶え始めた。……何それ、おもろ。





そんな未空を眺めていたら後ろの方で何かが動く気配がした。





「っ、……調子に乗ってんじゃねぇぞクソガキィイイイ!!」

「お兄ちゃん後ろっ!!」





ふぅ…、と息を吐いて銃を構える。





そして襲い掛かって来る男に向かって躊躇なく引き金を引いた。





バンッと、銃声が鳴り響く。





「―――、」





シーンと静まり返る中、男はズルッと腰を抜かしてその場にしゃがみ込んだ。





「ざーんねん、外れちゃった」





にいっと得意げに口元を緩ませれば、地面にしゃがみ込む男は夏だと言うのに見るからに冷や汗を掻いてガタガタと震え出した。



まさか本当に撃つとは思わなかったって?

いや、撃つでしょう。撃っても問題なくね?

だってこれおもちゃだし、男の後ろに仲間連中しかいなかったから無関係の人に当たる心配もないし。



(……ああ、本当に残念)



でもこれ以上深入りすると面倒なことになりそうな予感がしたから連中をそのまま放置することにした。
それにギャラリーがいる中であんなことしちゃったからアイツに見つかるのも時間の問題だし、早いところこの場を去った方がいいだろう。
そう思って未空に提案しようとした時、先程まで真っ赤な顔して唸っていた未空がガバッと俺に抱き付いて「リカ格好良いぃいい!!抱いてぇええ!!」と喚き出した。
そのせいでドッと野次馬共が沸いた。いや、煩ぇって。



「……未空、とりあえず落ち着いて」

「リカほんっと格好良かった!!めちゃくちゃ格好良過ぎて心臓痛いんだけど!!ねぇ何で!?何でそう言うの皆の前で見せちゃうの!?俺のリカなんだよ!!」

「だから落ち着けって」

「お兄ちゃんかっけぇ!本物の殺し屋みたいだった!」

「殺し屋って…」



銃持ってたからって安直な…。

そもそも殺し屋って格好良いのか?


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