歪んだ月が愛しくて3
「坊主、残り4発残ってっけどどうする?撃ってくか?」
「あー…いいです。さっきの連中がまだ……っていねぇし」
「さっきの連中なら尻尾巻いて逃げてったぞ」
「いつの間に…」
「逃げ足早っ。アイツ等マジで口だけじゃん」
「ああ言う連中は口だけは達者だからな。吠えるしか能のない犬なのさ」
「何それ?何かの比喩?」
「ああ。ここいらの人間はああ言うどうしようもねぇバカをそう例えるんだよ。……でもあんな連中でも本能で分かんだろうな、絶対に逆らっちゃいけない人間ってのが」
「ふーん…」
「………」
「んでっ、話は戻んだけどよ、お前さん達に助けてもらったお礼をしなきゃと思ってな」
「お礼?」
そう言って未空が手渡されたものは、先程まで狙っていた砂時計だった。
「お、おっちゃんこれ…っ」
「これが欲しかったんだろう?さっきの礼だ、持ってきな!」
「でも…、本当にいいの?」
「ああ、お前さんなら大事にしてくれそうだしな」
「っ、ありがとうおっちゃん!大切にする!」
「おう!」
砂時計を抱き締めながら満面の笑みを浮かべる未空に釣られて、俺も笑みを浮かべながら未空の頭を撫でた。
「良かったね」
「うんっ!」
未空が嬉しいと俺も嬉しい。
そんな柄にもないことを思いながら未空の頭を撫でていると、おっちゃんは今度は俺に向かって「眼鏡の坊主は何が欲しい?」と尋ねて来た。
「いや、俺は別に…」
「遠慮すんなよ。好きなだけ欲しいもん持ってきな」
別に遠慮してるわけじゃないんだけど…。
でもこれ以上断るのも悪い気がして手近にあったお面を指差して「じゃ、これを…」と渋々選んだ。
「へ?このお面か?」
「はい」
「何々?リカは何貰った、の………は?何でこれ?」
「……俺が言うのも何だが、お前さんセンスねぇな」
「そう?」
だって祭りと言ったらこれでしょう。ひょっとこ。
これがないと祭りに来たって感じしないんだよな。
おっちゃんから貰ったひょっとこのお面を頭に付けると、未空は「やだ!もっと可愛いの選んでよ!」と最後まで異を唱えていたけど、まあ無視だよね。
そもそも可愛いものは可愛い人しか似合わないんだよ。だから俺にはこっちの方がお似合いなわけ。はい論破。
それから俺達はおっちゃんにお礼を言ってその場を離れた。
歩き出してからも終始未空の小言は止むことなかったが、まさかあの場にいた野次馬までもが俺のお面にドン引いてたとは知る由もなかった。
「あんなに格好良かったのに勿体ない…」