歪んだ月が愛しくて3
「……ねぇ、何でそれにしたの?」
「それって…、ひょっとこのこと?何まだ納得してなかったの?」
「だってそれ付けてるとリカの可愛さが半減s………してないね?ごめん、普通に可愛いわ」
「どっちだよ」
「でもでもっ、やっぱりそれ可愛くないよ!リカに全然似合ってないもん!」
「えー、でもこれないと祭りに来たって感じしなくない?」
「しなくないよ!てかお祭り初心者にそんな質問返ししないでよ!返答に困るじゃん!」
「だって未空がしつこいから…」
「そりゃしつこくもなるでしょう!何でこんなプリティーで格好良いリカがひょっとこなの!?何ギャップ!?ギャップ萌え狙ってんの!?」
「狙ってねぇよ」
何だよ、ギャップ萌えって?
そんなんで萌えんのか?ひょっとこだぞ?
「そもそも何でお面にしたの?折角おっちゃんが何でもいいって言ってくれたのに…」
「んー…何となく?未空といると良くも悪くも目立つからこれで顔隠そうかなって」
目立つの嫌いだし…、と念を押すと未空はキョトンとした顔を見せた。
「え、それリカが言っちゃう?」
次第に呆れ顔で半目になる未空に俺は訳が分からず首を傾げた。
「未空さ、自分の顔の良さちゃんと自覚してる?会長達と一緒にい過ぎて感覚バカになってんじゃないの?」
「なってないよ。この顔がそれなりに万人受けすんのは自分でもちゃんと分かってるけど、それはリカだって一緒じゃん。リカだって生徒会のメンバーなんだし、無自覚に人を誑し込む天才だし、寧ろ俺なんかよりもリカの方が何倍もモテるからね!そこちゃんと分かってる!?自覚してる!?」
「モテる?俺が?……え、未空目見えてる?レーシックした方がいいんじゃない?」
「ほら、そう言うところだよ。本当全然分かってないんだから…」
「分かってないも何も俺ってこんな顔だよ?しかもそれプラスクソダサい眼鏡してるのにモテるわけなくない?」
「でも実際モテモテじゃん!アゲハとか汐とか体育祭の時に絡んで来たナンパ野郎とか、俺とか俺とか俺とかっ!」
「それほぼ未空しかいなくない?」
「それとGD!我孫子だけでも面倒なのに何あの下っ端連中は!?何であんな連中弟子にしちゃったのさ!?」
「そんなこと言われてもね…」
「言っとくけど、今や聖学でのリカの人気率チョー半端ないんだよ!覇王親衛隊に引けを取らないくらい色んなところからリカガチ勢が増えつつあるんだからね!」
「ヘー、ソーナンダー」
「少しは興味持ってよ!自分のことなんだから!」
そんなこと言われても興味湧かないんだから仕方なくない?
どうでもいい。果てしなくどうでもいい。
そもそもお面の話から大分逸れてる気がする。
まあ、折角貰ったから有難く使わせてもらうけど。
流石にお面の下に眼鏡とマスクの両方は不快感半端ないのでマスクの方をズボンの後ろポケットに仕舞った。
「ねぇ、リカ聞いてる!?」
「あー…、」
聞いてる聞いてると適当に相槌を打とうとした時、行き交う人々の群れの中から懐かしい顔を見つけてしまった。
様々な人が行き交うこんな場所で、それも今このタイミングで。
(タイミング最悪…)
当然あっちも俺の存在に気付いているだろう。
それでもお互い足を止めず、不自然に進路変更するわけでもなく、出来ることならこのまま他人のフリして素通りしたいなんて甘い考えを抱いていた。
徐々に縮まる、俺達の距離。
50メートル、40、30、20、10…
5メートル…
あと少しで…、そんな油断が顔に出ていたのかもしれない。
だから気付かれてしまった。
「……あっ、ヤクザだ」
「あぁん?」
俺の甘い考えは未空の声によって見事に打ち砕かれた。