歪んだ月が愛しくて3
「―――よしっ、じゃあ今日はここまでにしよっか」
「だっああぁぁぁ!!キッツ!!」
「づっがれたぁ〜!!」
「ダメだ…、もう1ミリも動けねぇ…」
「やっぱ兄貴強ぇ…」
「さ、流石ッス…」
「皆もよく動けてたよ。危うく一発もらうとこだったし」
「(とか言って一滴も汗掻いてねぇし…)」
「(俺達よくこの人に喧嘩売って無事だったな…)」
「(鬼強過ぎ…)」
立夏の言う通りGDの連中は思った以上に動けるようだ。
これならマジで立夏のサンドバッグになってくれそうだな。運動不足の立夏には丁度良い。
「終わったようだね」
「ですね」
「俺も立夏くんに訓練付けてもらいてぇな…」
「下心なしで?」
「あ、あったりめぇだろっ!!」
時間にして1時間くらいか。
そういや夏休み中はどうするつもりだ?
「次は皆の苦手なとこ重点的に攻めていくからそのつもりでね」
「え、この短時間で俺達の弱点分かったんですか?」
「短時間って…、1時間ぐらいぶっ通しで身体動かしてるんだから誰だって分かるでしょう」
「いや、でも今日の1回だけじゃ…」
「2回だよ。それだけあれば十分。だからそのつもりで皆も予習しといてね。因みに岩城くんの弱点は上半身の使い方で、仁木くんは一つ一つの動きに無駄があるからそこをコンパクトに動かせるようになれば次の動きに移り易くなるから…―――」
平然と、淡々と、個々の問題点を挙げているが、本人だけはそれが普通じゃないことに気付いていない。
普通の人間は複数人を相手にしながら一つ一つの動きを分析出来ねぇんだよ。それもこの短時間でな。
末恐ろしい奴…。
立夏の中に流れる血がそうさせているのか、それとも立夏自身の才能か。
『 を取り戻せ。それが“風魔”であるお前の義務だ』
……何にせよ、その力を利用しようとする連中がいるのは確かだが。