婚約者が浮気をしたので即別れることにしたら、溺愛されることになりました。
 ニールの言葉が、うまく理解出来ない。

 ……あの時、ニールは『あの女性のことは知らない』と言った。

 それを、ろくろくに聞かずに、どうせ嘘だろうと決めつけたのは……他ならぬ、私だった。

「ニール!」

「わかるよ……ごめん。僕も君に早くこのメアリーのことを、話さないといけないとわかりつつも、怖がらせたくなくて言えなかったんだ」

 近付いて来たニールは私の顔を覗き込んで、説明してくれていた。

 ……うそ。ここで私は謝らないといけないのに、彼は悪くないってわかったのに。

 もう、なんだか、胸がいっぱいで、言葉にならない……。

 あれって、嘘だったのね。仕掛けられていた罠だったんだわ!

「怖がるって、何よ……しっつれいね」

 メアリーさんはニールの右腕を引っ張りながら、私のことを睨み付けていた。

「メアリー。もう僕に二度と構わないでくれ。僕はジェマと結婚する。何をしても無駄だ」

「嫌よ!」

 まったく引き下がる様子のない彼女の金切り声が聞こえてきた時、私の中にあった何かが切れた。

――――パァン!

「っ……いったい。何すんのよ!」

「……ジェマ?」

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