ひとつ、ふたつ、ひみつ。
ベランダに横たわっていたイケメンが、ゆっくりと体を起こす。

「いっ、てぇ……」

しゃ、喋った。

お隣に大声で助けを求めたいけど、やっぱり声が出せない。

頭を押さえたイケメンが、こちらに視線を動かす。

「あ」

「あ」

どちらが先だったか、分からない。

お互いの存在を認識して、彼がばつの悪そうな顔をして叫ぶ。

「あっ、怪しいものではありません!」

怪しさしかない。

「すみません、今はどの時代ですか? 俺は、認識番号33110、仁村真尋(にむらまひろ)です。番号で調べてもらえれば、犯罪歴がないって分かってもらえるかと」

怪しさしかない!!
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