ひとつ、ふたつ、ひみつ。
「すごいな、こまり。分かってないんだ?」

「え、な、なにが?」

というか、もうスリスリってしないでほしい。
妙な気持ちになってくる。
話が入ってこない。

「分かってないから、土曜日にデートの約束なんかしちゃうんだろうけどね」

そっか、玄関にいたから、外での会話が聞こえてたんだ。

「デートなんかじゃないよ。買い物に付き合うって、それだけだもん」

手が、痛いよりも……熱い。
真尋くんが触れているから。

「……真尋くん、なんで怒ってるの?」

「そういうのは、分かるんだ」

「えっ、本当に怒ってるの? なんで? 私のせい?」

「うん、こまりのせい」

「えっ!? なな、なんでっ?」

私は、泣きそうな顔をしていたのかもしれない。
真尋くんはフッと笑って、私の目元に指で触れた。

「ごめん、怒ってないよ。こまりのせいで、困ってただけ」

そして、おかえりのあいさつを思い出したかのように、唇が頬に触れる。

「見たかったんでしょ? 俺が、こまりで困るところ」

それは、私が今日の昼休みに言ったばかりのセリフ。

だけど。

「やっぱり私の方が、真尋くんに困らされてるんだけど……!」

真っ赤な顔でキスされたばかりの頬を手で押さえる私を、どこをどう見ても困っていない真尋くんは笑った。
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