ひとつ、ふたつ、ひみつ。
「な、なに? 停電? ブレーカー落ちた?」

真っ暗で何も見えない空間にあたふたしていると、太ももの上の重みが消えた。

真尋くんの場所は、手首につけている真っ赤な液晶画面が(しめ)している。

シャッと、ベランダへ続くカーテンを開ける音がする。
よく、迷いもなく歩けるなぁ。

「この辺、全部停電みたいだよ」

窓の外を見た真尋くんが、冷静に告げる。
月明かりで、ぼんやりと顔が見える。

「そうなんだ。なんでだろ。計画停電のお知らせとか、来なかったのに……」

暗い夜は、嫌い。
誰もいない、音もしない、その場から動けなくなる、こんな夜は。

「こまり、大丈夫?」

「!」

手をぎゅっと握られて、自分が震えていたことに気付かされた。

そうだ。今は、ひとりじゃない。
暗くても、真尋くんがいる。

「だ、大丈夫……。ありがとう……。私、ちょっと……暗いのがだめで……」
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