ひとつ、ふたつ、ひみつ。
「……帰らないんですか?」

「お願いがあります」

「えっ、嫌です」

先回りして拒否をするけど、彼は私の目を正面から真っすぐ見て、手を取った。

「ひえ!? ちょ、はなし……っ」

「どうか、俺をここに置いてくれませんか」

「む、無理無理無理、無理ですっ! 私、ひとり暮らしで……!」

「ちょうどよかった」

「よくないから言ったの!」

ますます手をぎゅうっと握られて、腕の長さより後ろに逃げられない。

やばいって、だめだって、近すぎるから!

「俺、今すぐには元の世界に帰れないんです。このタイムマシンが、壊れてしまって」

スマートウォッチじゃなく、タイムマシンだったか。
スクデに比べたら、普通の名称。
警告音のような音はすぐ止んでいたけど、画面はずっと真っ赤。

「機械が直るまで、俺をここに置いてください」

困る、本当に困る。
一目見たときからずっと、顔が好きすぎるの……!
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