ひとつ、ふたつ、ひみつ。
真尋くんが、輝かせた瞳で私を見る。

う、キラッキラ。

もう、王子様じゃん。
太陽の光で出来た髪の毛の天使の輪は王冠だし、ユニクロの服がファンタジー漫画の貴族のあれに見えるもん。

「雪が? ここで?」

「う、うん……」

待って、近い近い。
王子、顔が近いです。

「いいな。見てみたい」

「冬になれば、見れるよ。うちのマンションのベランダからも」

「本当に?」

「うん、一緒に見ようよ。綺麗だよ」

「……」

何も考えずに言ってしまったけど、真尋くんは少し悲しそうに笑うだけで、返事の代わりに私を抱きしめた。

……ああ、そっか。そうだった。

冬になるまで……真尋くんはここにいないかもしれないんだ。
元の世界に、帰ろうとしているから。
帰る手段を、知っているから。

「……真尋くん、天気がいい日にまたこの公園に来ようね」

「次は、弁当を持って来るのもいいな。俺が作るよ」

「本当? 楽しみ」

“また”とか、“次”なんて。

“冬になったら”……なんて。

そんな日が、あるのかな。
この約束に、意味はあるの?

今日、改めて理解してしまった。
真尋くんは、違う世界の人。
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